◆MZ-700最後のゲーム
System-7B用、そしてMZ-700用最後のゲームとなってしまったEUGEA。MZ-700の64KBのうち48KBをほぼ数バイトを残してめいっぱい使い、System-7BとMZ-700の限界までせまったのですが、掲載されたのは写真のみ・・・。脱シューティングゲームを目指し、主人公のキャラも手、足、胴など分割して合成するという手法を使い、背景も最大3重スクロール、ステージも次々と分岐(自由に選択できる)していくというものでしたが、やはり時代の流れか陰謀か(笑)、力を入れて作ったゲームほど日が当たらない。
そこそこのゲームでも宣伝すれば売れるという。どんな面白いゲームでも知ってもらわないことには話にならないのは、わかります。テトリスやSameGameのように、ひたすら時間をかけてユーザーに広がっていくものもあります。しかしMZ-700には、それができなかった。当時すでに16ビットから32ビットへと移行し、8ビットマシンは好き者でない限り、中古品となり店に売られ、そして夢の島へと向かった・・・。それが時代の流れだった。ソフトは重用視されているが、それを動かすハードウェアがないと、どうしようもない。MZ-700に残された時間は少なかった。
RPG(ロールプレイングゲーム)と言うと、今ではドラゴンクエスト(ドラクエ)かファイナルファンタジー(FF)みたいなものだと認知されてしまった。一度定着すると、そのシステムに飽きたとしても同じシステムらしきものを求めてしまう。斬新なシステムであっても、日本ではなかなか受け入れてくれない。昔ナムコが出していたドルアーガの塔というゲームがあるが、このゲームを見せて「これもRPGだよ」と言っても、多分否定されてしまう可能性が高い気がする。RPGとは「ストーリーが用意されており」さらに「主人公が成長するゲーム」でないければ、ならない。そんな事はないのは昔のパソコンユーザー/ゲーマーならわかると思うのだが、すでにこの固定概念は外れない、そう思う。
EUGEAはRPGではなく純粋にアクションゲームだ。タイミングは結構シビアだが、ストーリーや物語の背景などはゲーム画面から多少なりとも察することができるようになっている。隠された剣と盾を探し出したり、体力回復アイテムなどもいくつか隠されている。
ゲームをプレイしてそのゲームの背景をかいま見ることができるゲームはゼビウスが有名だと思う。たかがシューティングゲームだが、当時綿密なゲーム背景の設定と、敵と自分との関係などなど後のゲームに与えた影響は多大だった。
「最近のXXXあまり面白くないね」という言葉を雑誌等で読むことがある。XXXにはADVでもシューティングでもRPGでも好きなジャンルの言葉を入れてもらってかまわない。RPGが面白来ないのは、ストーリーが面白くないからだとかシステムが悪いとか言われる事がある。では、ストーリーがないのに面白いRPGだってある。ザナドゥのように。
また雑誌で「ゲーム性が低い」という言葉をよく見かけるが、この「ゲーム性」って何なのか? SPACE BLUSTER FX制作の頃から、非常に長い間それが何なのかわからなかった。先ほどのRPGのようにストーリーが面白くない=ゲーム性が低い・・・となるとトランプゲーム(ソリティア=一人遊びのこと)や、インベーダーゲーム、テトリスなどストーリーなど、全く関係がない。同じジャンルであるザナドゥにも、これがあてはまらない。また、ゲームのシステムだという意見もあるが、それならば格闘ゲームは全てヒットしないとまずい(極論ではあるが)。
RPGのストーリー重視、ストーリー偏重指向は日本ファルコムのRPG「イース、イース2」の影響だろう。さらに追撃ちをかけたのがドラゴンクエストだったと思う。おかげでストーリーの面白さ=ゲーム性の高さと勘違いしたゲームが大量に出回った(俗にいうクソゲーという)。
EUGEAにも、ちゃんとストーリーは用意されている。が、それはあくまでも「脇役」であり全面に出てくる事はない。しかし、やはり時代にそぐわなかったのだ。
実はこのEUGEA以降、MZ-700で完成させたゲームはない。作りかけのゲームはあったが未完成となった。EUGEA以降、「もっとゲームを手軽に作りたい」と思いSYSTEM-7cの制作に入ったのだ。しかし、このSYSTEM-7cもダンプリストは掲載されず写真と説明/解説のみで潰えた。問い合わせが来て配布したのは、わずか4人しかいなかった。SYSTEM-7cと、その目的、目標についてはそちらを見てもらうとしてEUGEAの話を続けよう。
実はEUGEA以降ゲームができなかったのは「ゲーム性って何だ?」と悩んでしまったからだった。この「ゲーム性」というものに明快な答えを与えた雑誌もライターもいなくて、ゲーム性はこれだ!とあてはめて試行錯誤し放棄し、また考えるといったそんな長い時代がつい最近まで続いた。おかげでMZ-700/EUGEA作成の1989年以降Macで最初のゲーム「DungeonStreet」を手がけるまで4年間ものブランクがあった。しかし「ゲーム性」というものが、わかっても実際は難しいというのが実感だ。もちろん、これは自分自身の力量が足りないからだというのはわかっている。だから、もっと勉強して、楽しいゲームを、面白いゲームを作りたい、そう思っている。
この文章を読んで将来ゲーム関係の職につこうという人がいるかもしれない。私がゲームを作っていた時代と違って、今は情報も豊富だし丁寧に教えてくれる人達も大勢いる。が、与えられた情報と教えられた当り前の事を一度、うたがってかかるのも重用な事だと思う。土台が異なればできあがるものも当然違ってくる。それが、また新しいゲーム/ジャンルへの幕開けとなる可能性も十分にある。そして、一度目が駄目で自分で「もったいない/惜しい」と思うゲームであれば、一度目のゲームで言われた文句を聞きのがさず、素直に続編に取り入れるた方がいい。ゲームを買うのは自分ではなく、遊んでくれた人、遊んでくれる、遊びたいという人達なのだから。
このゲームは背景が三重スクロールするのは、前にも書きましたが具体的にどうやっているのか説明します。ただし、手法的にはMZ-700でしか通用しないものである事を断わっておきます。
まず最初に仮想画面に一番手前の背景を描画します。そして自分のキャラや敵を描画する前、つまり最初の背景を描いた時点で中間の背景を描画します。とは言っても、そのまま描画したのでは、手前の背景まで書き換えてしまいます。そこで手前の背景のデータに「細工」をしておきます。どのような細工かというと、色データで使用されないビットを1(オン)にしておくのです。つまり中間の背景を描画する場合、色データの特定ビットが1の場合だけ描画してやります。このようにしてやれば手前の背景を書き換えてしまう事はありません。一番奥の背景も2番目の背景を描画するのと全く一緒の方法でできます。
EUGEAでは手前の背景プレーン、主人公&敵のプレーン、背景のプレーン、さらに奥の背景プレーン、固定された背景プレーンとなっています。これだと4重スクロールでは?と思うかもしれませんが、主人公より手前の背景と主人公のすぐ後ろの背景は一緒にスクロールするので実質的には3重スクロールになります。それにしてもSPACE BLUSTER FZの時は、あれが限界速度だったのにEUGEAでは、こんな無茶苦茶なキャラクタも画面サイズもやっている処理も負荷が多いはずなのに速いのですから、やはり技術の積み重ねは大事です。
夕焼けの神殿。栄華を誇った神殿も今は海に沈んでしまった。
夕闇迫る丸木橋。古い橋なので所々腐っている。
魔法の力で雲を渡っていく。
魔物がうごめく怪屋敷。
地下洞窟。視界が悪く自分の回りしか見えない。
魔物に占拠された城に突入。強力な騎士と魔法使いが襲ってくる。
救うべき人が牢の中に! しかし強大な力を持つ魔を倒さなければならない。
魔を倒し外に出ると霧が晴れ、朝日が差し込む。戦いは終わったのだ。
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Update : 1996/03/10, 2003/11/20