コンピューター業界はめまぐるしくトレンドが変わっていく。とにもかくも流れが速い世界だ。単に速いだけでなく年々高度な技術が必要とされ、それについていくだけでも大変な人も多いだろう。そして、あまり儲からないスマートフォン市場にうんざりしている人もいるのではないだろうか。また、IT業界はサービス競争の嵐だ。この嵐に巻き込まれたら、ひとたまりもない。
そんなひどい状況から抜け出して、もっとのどかにプログラミングを楽しみたいという人も多いのではないだろうか? そんな人にお勧めなパソコンがmz-700である。昨今のプログラム開発にうんざりしている人は、ぜひmz-700でプログラミングしてみるとよい。ここでは、あなたがmz-700でプログラムを作った方がいい10の理由をあげてみよう。
安物のAndroid端末や初期のWindowsマシンの不安定さに苦しめられた人もいるのではないだろうか。AndroidやiOSなどのスマートフォンは頻繁にOSが代わり、そのたびにプログラムをバージョンアップしなければならない。これはWindowsでもMacOS Xでも同様だ。おまけに、購入したマシンは長くても10年でゴミ箱行きだ。壊れて使えなくなってしまったり、新しいOSが使えなくなってしまうからだ。ひどい資源の無駄遣いである。
それと比べるとmz-700は抜群に安定している。1982年に発売されてから2012年まで一度もモデルチェンジをしていないのだ。実に30年間ハードウェアやOS(BIOS/IOCS)のバージョンアップをしていない。それでいて、今でも問題なく動作する。今後もmz-700は新機種が発売されたり、バージョンアップされることがないので、安心して死ぬまで使う事ができるだろう。
MacBook AirなどSSDを搭載したマシンは非常に高速に起動する。また、Google Chromebookのように非常にシンプルなOSを搭載した場合も非常に高速に起動する。
しかし、いずれも1秒では起動しない。やはり使う場合には電源を入れたら瞬時に起動して欲しい所だ。そう思う人は多いだろう。そんな人にmz-700はぴったりだ。電源を入れてから起動に1秒すらかからないのだ。電源を入れれば、すぐに使う事ができる。気の短い人にもお勧めである。
デジタル時代になってからは、次々と新たなメディアが登場した。フロッピーディスクやCD/DVDはもちろん、SDカードやメモリスティック、USBメモリなど多種多様だ。しかし、フロッピーディスクはすでに生産中止状態になり、CDでさえ家電量販店での売り場面積はごくわずか。SONYが出したメモリスティックはいつ消えるかわからず、規格が次々と出て来るSDカード。おまけに、30年後にそのメディアが残っているかどうかすらわからない。データの記録は大問題だ。クラウド上にデータを移行するという方法もあるが、自分のデータが他の国のサーバーにあるというのが嫌な人もいるだろう。
安心してデジタルデータを手元に残したいという点でもmz-700は、おすすめだ。何と言っても未だに生産されているカセットテープが記録デバイスだからだ。40年近く生産され未だに再生することができる抜群の安定度を持っている。
しかしカセットテープでは不安だという人は多いかもしれない。幸いmz-700では1000年近くもつメディアも利用することができる。それは、和紙である。プログラムを和紙に出力すれば1000年近く持たせることができる。ここまで、長期間実用に耐えるメディアを利用できるのはmz-700ならではである。耐久性、耐光性、耐水性そして価格的にも優れている。ちなみに1000年以上記録したい場合は石碑にダンプリストを刻む方法もある。人類が滅びてもmz-700のプログラムだけは残るだろう。
スマートフォンやパソコンのソフトウェアは年々単価がさがり、苦しい状態になっている。スマートフォンに至っては100円でも高いと感じてしまうほどソフトウェアの価格は低下している。この価格の下落に苦しめられている人は多いだろう。
最新のAndroid/iOSで作っても100円なら、かなりの数を売らなければ元がとれない。激しい競争の中では、勝ち抜いていくのは難しい。まさに血みどろの戦いである(レッドオーシャン)。
その点、mz-700であれば開発費も安くすむだけでなく、ソフトウェアの単価も高く設定できる。どのみち、マニアしかいないのだから、1本一万円の価格でも問題ない。買う人は買うのである。スマートフォンで100円のアプリを100本売って、ようやくmz-700のソフトウェア1本と同じ価格だ。それなら、確実に買ってくれるmz-700のマニア向けに販売する方が安定した収入が見込めるだろう。まさにブルーオーシャンである。血みどろの戦いをする必要はないのだ。
また、同じ手法でPC-6001など他のレトロなソフトを開発し販売する手段もある。
年々高度な技術が要求されるのにソフトウェアの単価は下がり開発コストだけがかさむ時代だ。開発コストはOSのバージョンアップにともなうもの、マシンの定期的な購入やメンテナンスなど様々だ。また、3年前には有益であったテクニックが、あっという間に陳腐化し役に立たなくなってしまう事も多い。AndroidやiOS、Windowsなどは思いのほかコストがかかるのだ。
その点、mz-700は低コストで開発できる。メモリが64KBしかなくグラフィック機能もない。サウンドも単音だ。このため、ゲームを作るにしてもグラフィックを外注したり、豪華な音楽を作ってもらう必要がない。すべて内製しても許されてしまうほどの低機能なのだ。外注する必要すらないので、その分コストは安くなる。
開発のための環境も安定している。Javaのようにバージョンアップのたびに変わったりすることがない。トレンドに乗ってObjective-Cだ、JavaScriptだ、Pythonだなどと慌てふためく事もない。
mz-700での開発はZ80マシンを直接入力するだけだ。マシン語は0〜9とABCDEFの文字の組み合わせなので、英単語の命令を覚える必要すらない。極めて単純かつ簡単である。例えば画面にAの文字を表示するには「21 00 D0 36 01」でOKだ。おまけにマシン語なのでJavaなどと比べても遙かに高速である。一度覚えたら何十年も使えるので、結果学習コストが減り、開発コストも必然的に減っていく。また、Z80のマシン語なら40代、50代のおじさんでも理解できるというメリットがある。
近年のマシンは処理速度の向上にともなって発熱がひどい。熱による暴走を防ぐためにファンをまわすため、非常にうるさく思考の妨げになる事もある。
その点、mz-700は非常に静かである。そもそも、ファンがついていない。ファンがついていないからといって、発熱がひどいわけではない。もともと、クールなのだ。
プログラマにとって静かにじっくりと思考できるmz-700は魅力的だろう。
Windowsマシンではウイルスガードソフトが欠かせない。下手にウイルスにやられてしまい、ハードディスクの中身が改変されたり消されてしまったら目も当てられない。また、ウイルスは次々と出て来るため、いたちごっこになっている。いつ、やられるかわからないのだ。
その点、mz-700は絶対にウイルスにやられることはない。そもそもOSが存在していないので感染することができない。また、起動プログラムはROMに焼かれているためハードウェアからROMを取り外してウイルスを仕込まない限り無理である。
絶対にウイルスに感染しないパソコン、それがmz-700だ。これなら、安心してプログラミングできると思うがどうだろうか。
最近はRetina Displayなどノートでも高解像度の液晶を搭載したマシンが発売されている。しかし、液晶モニタが壊れてしまうと、どうしようもない。液晶画面が壊れてしまうとお手上げなのだ。特にタッチ操作を行うスマートフォンでは致命的だ。
mz-700は液晶モニタだけでなく、ブラウン管のテレビにも接続することができる。しかし、液晶モニタもブラウン管テレビもない場合がある。例えば地震などで本体だけ持って避難した場合などだ。液晶モニタも壊れ、テレビもケーブルもない。
しかし、そんな時でもmz-700なら安心だ。電源を入れてPのキーを押すだけでよい。内蔵プロッタプリンタがモニタ画面代わりになるのだ。紙さえあれば、どこでも使えるのがmz-700なのだ。
いざとなればプログラムのソースが公開されている方が、何かとよい場合がある。特に内部の動作で、おかしい部分があればソースコードが公開されていると原因をつきとめる時に助かる。しかし、オープンソースといえども限界はある。ソフトウェアだけがオープンであっても、ハードウェアがオープンではない。ソフトウェアはハードウェアに依存する部分があるので、ハードウェアがクローズであれば対処が難しい。グラフィックを表示しようにも、グラフィックカードがブラックボックスならお手上げだ。
その点、mz-700は非常にオープンである。まず、ROMの中身が公開されている(マニュアルに掲載されている)。そしてハード的にもオープンだ(回路図がマニュアルに載っている)。壊れたら自分で修理することもできる。特に、ここ数十年来のカスタムICなどは、搭載されていない。極めて汎用的なのだ。ちなみに、mz-700だけでなくシンクレアZX81などもオープンである。
いかがだろうか?mz-700は近年のパソコンの不満の多くを30年も前に解消してしまっているのだ。こんな、素晴らしいマシンでプログラムを作らない手はないだろう。また、mz-700はネットに接続できないため違法ダウンロードの心配もない。ただし、録音したカセットテープをmz-700で再生した場合は、どうなのか謎である。
2012.6.21 © K.FuRuhata